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記事入力 : 2010/08/02 15:22:07
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格差社会:社会保障の強化図る日本、「福祉の逆説」とは
所得の上昇というはしごが壊れるのは、世界的に見られる現象だが、まだどの国も、そのはしごを修復するための完ぺきな方法を見いだせていない。
日本では 1990年代に入り、低成長や高齢化に長期不況まで重なって、貧富の差が広がり、中間層が貧困層へと転落する流れが本格化した。
日本政府は、低成長路線から軌道修正し、果敢な経済改革を断行するのではなく、財政支出を増やして社会保障の強化を図る道を選び、その結果、国の借金は雪だるま式に膨らみ、将来の世代にツケを回す結果を生んだ。
それにもかかわらず、貧困から脱出するためのはしごの修復は、依然として進まず、「福祉の逆説」を生んでいる。
2008年、千葉県のある高校が、入学金を払えなかったという理由で、新入生二人の入学式への出席を認めなかった。
また、大阪のある区役所は、国民健康保険料の未納を理由に、小学生の子どもの保険証を取り上げた。
このような行政側の冷たい対応に、国民の間では「子どもたちに対するひどい仕打ちだ」という同情論が広がり、社会問題となった。
職を失った親が、子どもの高校の入学金や国民健康保険料を払えなくなったというのが、直接的な理由だった。
日本では、職を失った人には失業給付金が支給され、その期間が終わっても職に就けない人は生活保護の対象になる。
そうして支給されたお金を子どものために使えばよいはずだが、親たちはまず、学費や保険料の負担を避けたのだった。
子どもたちがこうして不幸に直面するのは、一体誰の責任なのだろうか。
職を失ったからといって、子どもを放置した親の責任なのか。
不況を理由に働く場を奪った企業の責任なのか。
それとも、有効な手を打てず、20年にわたる長期不況を招いた政府の責任なのだろうか。
2010年、一つの解決策が講じられた。
日本政府は、親の失業などで健康保険の恩恵を受けられなかった、全国の3万人の子どもたちに、健康保険証を交付した。
また、高校も全面的に無償化された。
その予算は、十分な財源がないため、国債を充てる方針だ。
一見すると、政府が責任を取ったかのように見えるが、実際には政府も、企業も、親たちも責任を取ってはいない。
政府は経済成長に対する責任を、企業は雇用に対する責任を、親たちは子どもの養育に対する責任を、それぞれ放棄した。
その代わり、将来返さなければならない国の借金を、将来の世代に押し付けた。
福祉を手厚くし、充実させていくとともに、政府や企業、そして親たちは責任を回避し、負担を減らした。
だが、借金を返さなければならない将来の世代の責任や負担はとてつもなく重い。
これが日本式の「福祉の逆説」だ。
日本人の貧富の格差は、低成長と高齢化が重なった1990年代半ばから急速に広がった。
これに対し、日本政府は所得の再分配政策を積極的に進めてきた。
90年に11兆円だった社会保障予算は、昨年には24兆円にまで増加した。
これは量的な意味で、日本政府がいかに社会保障に積極的かということを証明している。
だが、中身を見ると、「希望のない分配」の真の姿が見えてくる。
24兆円に上る社会保障予算のうち、19兆円が高齢者の生活を支える年金、医療、介護保険の財源となった。
また、生計の維持が困難な家庭に支給される生活保護費は2兆円に上る。
一方、将来の世代のための福祉施策である、保育園の整備・運営や児童手当、児童扶養手当は、計8000億円にすぎない。
借金をしてまで分配する金のほとんどが、高齢者福祉に回されているというわけだ。
こうした不均衡を是正するため、2000年代半ばに当時の小泉政権が進めた、後期高齢者医療制度をはじめとする福祉改革は、社会的な反発を受けた。
日本の手厚い福祉政策は、所得・社会階層の極端な二極化を防いだ、と評価されてきた。
だが、財政を動員しただけでは、貧富の差の拡大を食い止めることはできなかった。
貧困層に支給される生活保護費(1946年に導入)を、4代にわたって受給する世帯も増えている。
一たび貧困層に転落すれば、ひ孫の代まで貧困から脱出できなくなってしまうというわけだ。
経済協力開発機構(OECD)は、日本の貧困率を発表した際、
「非正規雇用者(パートタイマー、契約社員、派遣社員など)が急増したことが、貧富の差の拡大した原因だ」
との見方を示した。
日本は伝統的に、終身雇用制度を通じ、企業が社員の所得を保障することにより、「1億総中流社会」を築いてきた国だ。
その日本で今、非正規雇用者は労働者全体の3分の1を超えている。
こうした変化は、制度面では、小泉政権が労働法を改正し、製造業への人材派遣を事実上、全面的に認めたことが決定的な要因となった。
だがこれは、競争力が弱まった日本の製造業を立て直すための苦肉の策という側面もあった。
野村証券金融経済研究所のシニアエコノミスト、西沢隆氏は「当時の政権が、非正規労働者の受け入れを通じ、製造業の再生を図らなければ、製造業の弱体化によって失業者が増え、貧富の差はさらに拡大していた」との見方を示した。
財政資金を通じた日本式の貧困救済は、20年にして、ついに限界を迎えた。
1990年に60兆円だった政府の税収は、低成長により、昨年には46 兆円まで落ち込んだ。
財源が不足しているため、政府の新規国債発行額は今年、税収を上回る見通しだ。
借金が給与収入を上回るという、前代未聞の事態となる。
こうして、日本政府の借金は今年3月末現在、882兆円にまで膨れ上がった。
国内総生産(GDP)に対する比率は200%を超える。
これは世界最悪の数値だ。
それにもかかわらず、ギリシャのように破産状態に陥っていないのは、これまでに1400兆円を超える国民の貯蓄が、国債の購入に充てられてきたためだ。
だが、貯蓄を取り崩して生活する高齢者が増えているため、国民の貯蓄も近い将来、絶対額が減少する見通しだ。
がけっぷちに追い詰められた日本政府は、ついに消費税の税率引き上げというカードを切ろうとしている。
現在税率が5%の消費税を、国際的な水準である10%程度まで引き上げ、税収を毎年2兆5000億円ずつ増やすというわけだ。
だが、これが実現したとしても、日本政府が現在進めている高齢者福祉施策(最低保障年金制度)に使えば、すぐに枯渇してしまう。
その後のシナリオについては誰も分からない。
はっきりしていることは、今の子どもたちに、将来負担を押し付けることにならざるを得ないということだ。
東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員
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