2010年8月16日月曜日

日雇い人生

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記事入力 : 2010/08/06 15:04:16
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格差社会:日雇い人生、行き場のない住居難民たち

  8日深夜3時、ソウル駅近くの商業ビル地下1階にある漫画喫茶のドアを開けて中に入ると、漫画を読んでいる客は一人もいなかった。
80坪(約264平方メートル)の明るい店内には、複数の中年男性が一人ずつソファー確保して眠っていた。
客の数は34人で、洗濯したばかりの衣服や靴下などがテーブルに置かれていた。
カウンターに座っていた店員(54)はあくびをしながら、「今いる客たちはここで生活している」と話した。

 カウンターの後ろにある棚には、客が預けた古い旅行かばんが保管されていた。
記者の気配を感じて目を覚ました一人の中年男性が、歯ブラシとタオルを持ってカウンター横のトイレに入っていったた。
小便器一つ、蛇口が一つ設置されたこのトイレのドアには、「洗濯1000ウォン(約73円)」と書かれた紙が張られ、店員は「水道代だ」と説明した。

 近くにある別の漫画喫茶(40坪=132平方メートル)でも、同じく9人の長期宿泊者が生活していた。
彼らは頭の先まで布団をかぶり眠っていた。
この店の店員(50)は、
「1カ月の利用料は15万ウォン(約1万1000円)だが、それでも高いのか、1日の利用料4000ウォン(約300円)を支払って出入りする人もいる」
と話す。

 「客は大工や配線技術者が多い。早朝から引っ越し屋の仕事や建設現場に出ては、夜7時ごろに戻ってくる。仕事のない日は1日中漫画を読んでいる。中には、ここで5年以上生活している人もいる」

 漫画喫茶やインターネットカフェ、喫茶店、考試院(受験生向けの貸し部屋)、ビニールハウスなどで生活する、いわゆる「住居難民」が増加している。
希望のはしごから転落し、家と路上の狭間でひっそりと生活している人たちだ。

 貧困問題研究所のリュ・ジョンスン所長は、「住宅難民こそ貧民の中の貧民だ」と話す。
住居難民は補償金を貯める力がないため、毎月の家賃を支払って部屋を借りることができない。
親や子供、配偶者、友人たちとの関係も途絶え、極端な孤独に陥りやすい。
安定した住居を確保できず、国が提供する福祉の恩恵さえ受けられないケースも多い。
完全なホームレスは、保健福祉部の統計で1万4000人といわれているが、住宅難民の居場所は、韓国社会ではホームレスの次に低い「はしごの1番下」だ。

 社会福祉の仕事に携わる関係者は、例外なく「住居難民は徐々に増加している」と口にする。
ところが政府は、その正確な人数さえ把握できていない。
何とか推定できる唯一の資料は、国家人権委員会が今年1月に発行した「非住宅居住民の人権状況実態調査」だけだ。

 この報告書によると、住居難民は少なく見積もっても 15万9000人と推定されているが、実際はこれも氷山の一角に過ぎない。
人権委は全数調査を行っているわけではなく、一部の地域を対象にアンケートや聞き取り調査などから結果をはじき出す方法で推定したものだからだ。
インターネットカフェやサウナ、漫画喫茶、安宿など場所を変えながら生活する人たちは、実態を把握することができないため、最初から調査対象にもなっていない。

 人権委の報告書によると、住居難民の平均年齢は52歳で、平均収入は月52万6000ウォン(約3万8700円)。
半分は無職で、10人に6人(63.8%)は学歴が中卒以下だった。
国民全体(中卒以下24%)の平均と比較すると、学歴の低さは際立っている。
一人当たりの居住面積は平均20.90平方メートルで、半分以上が台所、トイレ、シャワー室を共同で使用している。

 彼らは住居費として1カ月に平均19万5000ウォン(約1万4300円)を支出している。
屋根の下で寝るという、最低限のぜいたくを味わうには、収入の3分の1を投じなければならない。
この点が、貯蓄と再起の障害となり、はしごを上る最低限の余力までも奪い去っているのだ。

 ソウル市西大門区霊泉洞の考試院で暮らすクァク・ヨンホさん(39)は、毎月100万ウォン(約7万3000円)にもならない収入で、24万ウォン(約1万8000円)の家賃を支払っている。
縦横2メートル、3メートルの部屋に幅90センチの布団を敷くと、足先が押し入れの中に入ってしまう。

 この考試院には同じような部屋が52室ある。
廊下が狭いため、ほかの入居者とすれ違う際は、一人が壁に張り付いて交互に通らなければならない。
クァクさんは廊下で見慣れない顔を見かけると、うつむいて知らないふりをする。
部屋に入ってテレビをつけると、どうにか聞こえる程度にボリュームを下げる。
薄い壁板の向こうからは、電話で話す声や服を着替える音などが聞こえてくる。

 クァクさんは10代後半から26歳まで、ソウル市麻浦区の小さな工場で働き、その間に貯めた5000万ウォン(約370万円)を元手に居酒屋を開業したものの、わずか半年で経営が行き詰まった。
金を貯めてマイホームを手に入れ、結婚して母親と同居するという夢は、このとき一気に崩れ去った。
ソウル駅近くの安宿や鍾路の路地裏にある考試院に寝泊まりし、建設作業員などの職を転々としながら生計を立ててきたが、家賃や食費、交通費、携帯電話代などを支払うと、部屋を借りるための補償金を貯める余裕など到底なかった。
長期公共賃貸住宅への入居を申し込んでも、補償金が足りない、家族がいない、身体は健康ということで、順番が後回しとなった。
福祉の恩恵だけでも受けられないかと調べたが、これといった情報も得られなかった。

 クァクさんは自暴自棄となり、一時は2年以上ホームレス生活をしていた。
その後、「このままではだめだ」と思い直し、もう一度工事現場で仕事を始めたが、今生活している考試院よりも良い部屋で生活するという希望は捨てた。


 それでもクァクさんは、住居難民の中ではましな方だ。
人権委が調査した住居難民の生活状況を見ると、「考試院→安宿→ビニールハウス→インターネットカフェ、サウナ、喫茶店、漫画喫茶」の順に、利用者の収入と住居費が低いということが分かった。
考試院の利用者は平均46歳で、月収は66万2000ウォン(約4万8700円)、そのうち22万4000ウォン(約1万6500円)を家賃として支出している。
しかし、インターネットカフェや漫画喫茶の利用者になると、収入は43万2000ウォン(約3万1800 円)で、利用料も13万7000ウォン(約1万100円)にまで下がる。

 ソウル駅近くのインターネットカフェにあるソファで、エビのように身体丸めて休息を取っていたチャン・ヨンチョルさん(35)。
4年間、このような生活を続けているチャンさんにとっては、クァクさんのように考試院で暮らすことさえぜいたくな話だ。

 中卒のチャンさんは日雇いの仕事を転々としながら、無料の炊き出しなどで何とか食いつないでいる。
日 曜日には近くの教会を周り、「チャルチャル」を行っている。「チャルチャル」とは、各地の教会を周りながら、日曜礼拝を終えた信者たちがホームレスに食費 として与える一人500ウォン(約37円)から3000ウォン(約221円)を集め、1日1万ウォン(約740円)から2万ウォン(約1500円)を稼ぐ ことを意味する隠語だ。

 チャンさんの夢は、かつて飲食店で配達の仕事などをしながら身に付けた料理の腕前を生かし、自分の店を開業することだ。
しかし、この夢を実現させる日がいつになったら訪れるのか、想像もできない。
毎朝暗いうちから中区北倉洞にある日雇い募集所で仕事を探しているが、仕事がなく何もしないで過ごす日の方が多い。

 彼らのように、生活を向上させる希望を失った住居難民を苦しめるのは、孤独感と憂うつさだ。
人権委によると、住居難民10人のうち4人(42.1%)が、借金や家庭の不和など、さまざまな理由で家族との連絡を絶っているという。

 8日夜7時、ソウル駅近くにある別の漫画喫茶には、1日の仕事を終えて住居難民たちが戻ってきた。
汗びっしょりの50代男性は、片手に漫画の本を手にしながら、「これはもう10回以上読んだ」と語る。
別のテーブルでは何人かがトランプ遊びをしていた。
その傍らでテレビを見つめるキム・ヨンチョルさん(45)に、漫画喫茶での生活について尋ねると、「家を借りる金もないし、一緒に生活する家族がいるわけでもない」と答えた。
その後もいくつか質問してみたが、キムさんは疲れているのか、何も言わずに目を閉じた。
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